紹介してくださいと言った手前、トレーナーと保険屋さんの3人で会うことになりました。場所は高級レストランです。
その外資系保険会社の営業マンは成功するための方法を私に話してくれました。
「成功は簡単だ。人と逆のことをすればいい」
話も雰囲気も私を魅了しました。オレも成功したい。保険は嫌いだけれど、この人について行けばすごいことになるかもしれない。翌日その人に
「入社させてください」
とメールを送りました。スカウトされたわけでもないのに、自分から売り込んだのです。それほど可能性を感じていました。1週間ほど経ったころ、了解の返事をもらいました。
さっそく食品メーカーの社長に退社の意思を伝えました。ところが、社長の口から意外な返事が出てきます。
「いくらほしいんだ? 給料を上げてやるから、辞めるな」
私は悲しくなりました。カネで人のこころをコントロールできると思っている社長の思い上がりと、カネで動くと思われた私と、そんなに簡単に給料を上げることができるのならなぜもっと前に上げてくれなかったのかという疑問で、ため息が出ました。
「私はもうここにいません。別の道に進みます。保険屋になるんです」
こう宣言していました。社長は呆れ声で
「保険屋? よくやるよ」
と言っていましたが、私の決意を翻すことはできません。この社長には最後に煮え湯を飲まされるというオマケがつきます。
私は有給休暇を消化して退社するつもりで仕事の日程を組んでいたのですが、社長は最後になって
「そんな話聞いてない。辞めるやつに何で有給休暇をやらないといけないんだ?」
と言い放ったのです。自分の人生を他人に任せてはいけないとあらためて痛感した一件です。
2013年7月1日、外資系生命保険会社に入社しました。母は
「転職を繰り返してやっと落ち着いたと思っていたのに、また? 課長になって安定したのに」
と反対していました。しかし、私の決意は揺らぎません。
最初の1カ月間の研修で「保険はこんなに素晴らしい商品だったのか。これなら売れる」と自信を持ちました。以来、中学や高校時代の友人をはじめ、前職の部下や親戚などを回って、月P10万円を上げていきました。
ところが、見込み客が枯渇する日がやってきました。2014年2月、行くところが1件もないのです。部下たちを置き去りにして飛び出し、その部下たちから保険の契約をもらってきたのに、付き合ってきた女性と結婚しようと話しているのに、行くところがないのです。
そんなある日の昼、営業に出るふりをして会社を車で出発しました。会社を出た途端泣けてきて……。交差点で止まった車の中で彼女に電話をかけ、涙声で「もう無理。甘かった。もう辞める」と伝えました。
彼女なら受け止めてくれる。そう思ったのです。しかし私の期待と違う言葉が戻ってきました。
(つづく)
その外資系保険会社の営業マンは成功するための方法を私に話してくれました。
「成功は簡単だ。人と逆のことをすればいい」
話も雰囲気も私を魅了しました。オレも成功したい。保険は嫌いだけれど、この人について行けばすごいことになるかもしれない。翌日その人に
「入社させてください」
とメールを送りました。スカウトされたわけでもないのに、自分から売り込んだのです。それほど可能性を感じていました。1週間ほど経ったころ、了解の返事をもらいました。
さっそく食品メーカーの社長に退社の意思を伝えました。ところが、社長の口から意外な返事が出てきます。
「いくらほしいんだ? 給料を上げてやるから、辞めるな」
私は悲しくなりました。カネで人のこころをコントロールできると思っている社長の思い上がりと、カネで動くと思われた私と、そんなに簡単に給料を上げることができるのならなぜもっと前に上げてくれなかったのかという疑問で、ため息が出ました。
「私はもうここにいません。別の道に進みます。保険屋になるんです」
こう宣言していました。社長は呆れ声で
「保険屋? よくやるよ」
と言っていましたが、私の決意を翻すことはできません。この社長には最後に煮え湯を飲まされるというオマケがつきます。
私は有給休暇を消化して退社するつもりで仕事の日程を組んでいたのですが、社長は最後になって
「そんな話聞いてない。辞めるやつに何で有給休暇をやらないといけないんだ?」
と言い放ったのです。自分の人生を他人に任せてはいけないとあらためて痛感した一件です。
2013年7月1日、外資系生命保険会社に入社しました。母は
「転職を繰り返してやっと落ち着いたと思っていたのに、また? 課長になって安定したのに」
と反対していました。しかし、私の決意は揺らぎません。
最初の1カ月間の研修で「保険はこんなに素晴らしい商品だったのか。これなら売れる」と自信を持ちました。以来、中学や高校時代の友人をはじめ、前職の部下や親戚などを回って、月P10万円を上げていきました。
ところが、見込み客が枯渇する日がやってきました。2014年2月、行くところが1件もないのです。部下たちを置き去りにして飛び出し、その部下たちから保険の契約をもらってきたのに、付き合ってきた女性と結婚しようと話しているのに、行くところがないのです。
そんなある日の昼、営業に出るふりをして会社を車で出発しました。会社を出た途端泣けてきて……。交差点で止まった車の中で彼女に電話をかけ、涙声で「もう無理。甘かった。もう辞める」と伝えました。
彼女なら受け止めてくれる。そう思ったのです。しかし私の期待と違う言葉が戻ってきました。
(つづく)
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