私には2つだけ譲れない夢がありました。1つは、将来独立できる仕事であること。もう1つは、自分が納得できて世の中のためになる商品を扱いたいということです。私はやり甲斐のある世界を築きたいのです。

 あまり大きな声では言えませんが、こんなふうに考える背景には、食品メーカーでの残念な経験があります。それは入社1カ月後に工場見学をしたときのことです。製造工程を見て初めて、その会社の主力食品の原材料が分かったのです。驚いた私は「社長。これは体に悪くありませんか」と思わず聞いてしまったほどです。社長の答えは明快でした。

「悪いよ」

 えー! 社長があっさり認めたことに対して私はさらに驚いてしまいました。しかし、私はそんな食品を売っていきました。

 スーパーのバイヤーさんを飲ませ食わせして、お返しにこちらの商品を買ってもらうのですが、スーパーの現場に行くと店長さんたちから
「売れもしないこんな商品を20ケースもぶち込みやがって。うちの店なら2ケースで十分なのに」
 などと叱られていました。

 こんな経験が根っこにあるので、
「自分が納得できて世の中のためになる商品を扱いたい」
 という強い思いがあるのです。
 それを不動産業で実現できると思っていました。

 しかし、ヒアリングしていくと不動産業に携わる人の満足度があまりにも低すぎることが分かりました。宅建の資格を取るために一生懸命に勉強をしてきただけに余計にショックを受けてしまいました。今から2年前、26歳のころの話です。

 当時私の体重は85キロありました。おまけに頭が薄くなってきていました。不動産業界への希望が打ち砕かれ、どうしようと思っていた日々を今でも思い出します。

 そんなある日、足の指の爪を切ろうとしたら、おなかの贅肉が邪魔になって爪が切れないという事態に直面してしまいます。飲ませ食わせの営業やストレスなどで体型が激変していたのです。人間として大変まずい。自分はどうなっていくのだろう。恐ろしくなりました。

 ここで私の頭に浮かんだのは2つの方法です。

 1つは脂肪吸引の手術を受けること。しかしこれは周囲に大反対されてしまいます。もう1つはトレーニングをしてダイエットすることです。

 インターネットで調べてみると、2カ月で20キロやせることができるジムを見つけました。費用は2カ月で50万円です。説明を受けてすぐに入会しました。

 今振り返ると、このジムを選んだことが私の人生の大きな転機になります。実はこのジム、富裕層相手のプライベートジムだったのです。

 2カ月で15キロやせることができ、そんな自分に自信ができました。この間トレーナーがいろいろな話をしてくれました。トレーナーといっても経営者でもあるので、経営の話やお客さんの話など多岐にわたります。

 ここでふと思いました。

 待てよ、富裕層のジムに来ることができる人が知り合いなら……と。そこでトレーナーに
「人間的にもセールスマンとしても素晴らしい人を紹介してください」
 とお願いしました。

 こうして、ある人に会うことになりました。
「ところで何をしている人ですか」
「生命保険の営業」
「えー! 保険ですか!」

 私は保険が大嫌いだったのです。よりによってその保険のセールスマンに会うことになるとは。

 私が保険を嫌いなのは理由があります。


(つづく)